校長日誌
【校長ブログ】旅立とう 未来を信じて~県立川口高校卒業式~
3月13日、県立川口高校では第77回卒業証書授与式を行いました。卒業した77期生は、1年生の時は新型コロナウイルス感染防止のために大きな制約を受け続けた高校生活のスタートでした。卒業生、保護者の皆様、学年団の先生方の今日までの奮闘に改めて敬意を表します。ご卒業、おめでとうございます。
卒業式では、最後に県立川口高校校歌を卒業生、在校生、教職員で大きな声で斉唱した後、式歌として「旅立ちの日に」(作詞:小嶋 登 作曲:坂本 浩美)を一同で斉唱しました。卒業生一人ひとりの川高への思いを実感しました。
今、校長室では、下校する卒業生たちが斉唱している校歌が聞こえています・・・
本日の式辞を紹介します。
中庭の木蓮の蕾もほころび始め、春の息吹を感じる季節になりました。この春の佳き日に、埼玉県立川口高等学校 77期345名の皆さんが、この諏訪山の学び舎から旅立つことを、大変うれしく思います。
御来賓の皆様の御臨席、多くの保護者の皆様の御列席を賜り、私たち教職員とともに卒業生の門出を祝していただけますこと、心より感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与いたしました345名の77期生の皆さん、卒業誠におめでとうございます。保護者の皆様におかれましては、お子様の御卒業、心からお祝い申し上げます。この3年間は様々な御苦労、御心配があったことと拝察いたします。
77期生の皆さん。卒業式にあたって、私の小さな思い出をお話しします。
今から3年前、私が皆さんと初めて出会ったとき、何人かの生徒が私に言いました。「僕たちはどうしても川口高校に通いたかったんです」と。そのとき私は少し驚きました。「どうして川口高等学校だったのですか」と聞くと、ある生徒がこう答えました。「だって、川口高等学校の校舎が他の学校よりも広いから、勉強しやすいと思ったんです」と。皆さんも、学校生活を通じて多くのことを学んできたと思います。それは教室の中だけではなく、校舎の広さを活かして、友達との交流や部活動、そして時にはその「広い空間」で何気ない会話を交わすことも大切な経験でした。
という思い出話は、私が書いたものではありません。これは、人間ではなく、生成AI(人工知能)が書いたものです。「面白いエピソードを入れた川口高校の卒業式式辞」と入力すると、すぐに答えが返ってきました。
AIは、インターネット上に存在する膨大な情報を、瞬時に集めます。私が川口高等学校の校長であること、川口高等学校にはこのアリーナをはじめ、野球場、サッカー場、ラグビー場など広大な敷地があることなどの情報を把握したのでしょう。しかし、間違っていることもあります。AIは、私が川口高校に3年前から校長をしていると推定しています。そして何よりも面白いエピソードでは全くありません。
皆さんは、聞いたときに直ぐにおかしいと気付いたでしょう。このように私たちには当然わかることが、AIにはわからないのです。技術を学ぶことも大切ですが、その技術を扱うのは人間です。あなたしか語ることができない「ことば」を大切にしてください。それが「個性」であり「人格」です。
皆さんが歩み出すポストコロナの今日の社会は、国際社会では、ロシアによるウクライナ侵攻、中東パレスチナでの軍事衝突と人道危機、貧困、地球環境問題など、多くの困難な問題に直面しています。日本では国際的地位が低下し、GDP(国民総生産)は米国に次いで41年間世界第2位でしたが、2010年に中国、2023年にはドイツに抜かれ世界第4位に後退するなど、縮みゆく日本の前途が案じられています。そのような中でも、AI技術の台頭は、人類史上、大きな転換点となるでしょう。
AIは私たちの生活、ビジネス、社会全体にすでになくてはならない存在となっています。その進化は私たちの生活を便利にしてくれるでしょう。私たちはAIを拒絶し過ぎることなく、しかし、AIに迎合し過ぎることもなく、人間とAIとがうまく共存する道筋を見出さなければなりません。
人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏が、今から20年前、2045年にAIが人間の知性を超える時点、いわゆるシンギュラリティを迎えることを唱えたのは有名です。しかし、想像をはるかに超えるスピードで技術は進歩し、シンギュラリティは5年後に迫っているという論調すら出てきています。
世界がコロナ禍前の時代に戻ることはありません。コロナ禍によって失われたものもありますが、新たに生まれたものもあります。これからのポストコロナの時代は、皆さんが創る新たな世界です。
そこで川口高等学校を巣立つ皆さんに、哲学者の鷲田清一さんの言葉を贈ります。
「ことば」は、今までとは違う自分に変わるための、手がかりです。
「私の人生は、こういうもの」「社会って、こういうこと」。誰もが自分なりのものの見方を持っていると思います。でも、もしかしたら全く違う見方が、あるのかもしれません。それに気づくきっかけになるのが、「ことば」であると述べています。
「ことば」をしっかりと受け止めましょう。馴染みのない「ことば」を何度も見返すうちに、人生や社会は「こういうものだ」という思い込みが薄れていきます。そして、「ことば」の輪郭がくっきりしてきて、世界がずいぶん違って見える時が訪れます。「ことば」をきっかけに、今までとは違う自分に変われます。
77期生の皆さん。ポストコロナの時代は、過去の成功例が通用せず、「正解」がない時代です。「正解」は一つではないでしょう。皆さんの今までの勉強の多くは、一つの答えのある問題を解くことでした。しかし、これからは、何が問題か分からない場合もあれば、問題が分かったとしても誰も答えを知らないという状況に遭遇します。21世紀を生き抜く皆さんは、この「解」のない課題に立ち向かう気概を持ち続けましょう。失敗することを恐れず、チャレンジしてください。
77期生の皆さんの健闘を称え、ますますの活躍を期待するとともに、前途に幸多きことを心からお祈り申し上げ式辞といたします。
【校長ブログ】ささえあったら、人になる~東日本大震災から14年~
3月11日、県立川口高校では、学年末考査返却日です。中庭の木蓮の蕾もほころび始めました。
今日3月11日は、2011年(平成23年)3月11日14時46分に東日本大震災が発生してから14年がたちました。県立川口高校でも半旗を掲揚しています。当時、私は県立高校の教頭をしていて、鉄道が不通になったため自宅に帰れなくなった生徒307名と、東京方面から徒歩で帰宅を目指す帰宅困難者の方160名を学校に宿泊してもらい、徹夜で対応してことを思い出します。
想像を絶する東日本大震災の被害に私たちは言葉を失い呆然としました。平成23(2011)年に大手広告会社電通が制作したCMに「ささえあったら、人になる」という作品があります。3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに考えさせられた「人と人どうしの助け合いの大切さ」。作品では「人」という文字をモチーフに、音楽とアニメーションで構成しています。
♪ながいぼうに
みじかいぼう。
ささえあったら、
人になる。
ささえることで
人を知り、
ささえられて、
人となる。
♪ながいぼうに
みじかいぼう。
ささえあったら、
人になる。
ささえるから
人なんだ。
ささえられるから
人なんだ。
「人を支え、支えられることが、今、必要である」ことを訴えた作品です。
大震災に遭遇しながらも、節度を失わず、悲しみに耐え、譲り合い、助け合う被災地の皆さんの姿は、私たちに「こころ」や「思い」がこの時代に大切なことを再認識させてくれました。あれから14年の年月が流れ、たぶん在校生は記憶にないでしょう。しかし、私たち大人は、東日本大震災の時の思いを語り継ぎ、あのときの思いを忘れてはいけないと思います。
【校長ブログ】先輩から大学受験方法を学ぶ~受験報告会を実施~
川口高校では、3月6日に318名の入学許可候補者発表をオンラインで行いました。新入生が川口高校で充実した高校生活を送れるように、私たち教職員がしっかりとサポートしてまいります。
本日3月10日、川口高校では、学年末考査返却、受験報告会です。受験報告会は、3年生で大学一般選抜の合格者による合格体験報告会を行いました。
今回は、現3年生9名が1・2年生に大学一般選抜受験へのアドバイスを行いました。9名の3年生が、一般選抜を受験して取り組んだこと、悩んだこと、後輩に向けての激励メッセージなど一人ひとりが工夫したプレゼンをしてくれました。「在学中に英検2級を取得するととても有利だ」、「自分は受験勉強のスタートが遅かったので、スタートは早ければ早いほど良い」、「一般選抜受験だからこそ経験できることがあるので、チャンスあるものは挑戦すること」などという具体的なアドバイスがありました。1・2年生はポイントをしっかりとメモしていました。
「高3の夏休みに480時間勉強した」というお話には、大学受験もスポーツも、物事を成就するためにはある程度の時間数が大切だということを実感しました。事前準備をしてプレゼンしてくれた3年生の皆さんに改めて感謝です。
がんばれ川高生!
【校長ブログ】これまでのがんばりは、必ず力になります~高校入試が終わりました~
2月26日、県立川口高校では、埼玉県公立高等学校入学者選抜の学力検査日。無事に学力検査を終了しました。
先週の真冬を思わせる厳しい寒さから一転し、春を少し感じさせる今朝、緊張した受検生諸君が続々と川口高校に来校しました。国語、数学、社会、理科、英語の試験が終わり、家路に向かう受検生の皆さんのホッとした笑顔が印象的です。
受検生(埼玉県では学力検査を受けるので、“受験生”ではなく“受検生”と言っています。)の皆さんは、本日まで、勉強だけでなく、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ対策など、本当に大変だったと思います。また、ご家族の皆さまは、誰よりも応援されてきたことと拝察いたします。
入試業務は、事故がなくて当たり前ですが、担当する学校にとっては、とても気を遣う業務です。天候や、交通機関の遅延対策など、いろいろな危機管理の想定をして実施しています。そのような中で本日を迎え、受検生の皆さんに実力を発揮してもらえる環境づくりができたて良かったと思っています。
一生懸命に取り組んできた受検生の皆さんに、改めてエールを送りたいと思います。これまでのがんばりは、必ず大きな力になります。今夜はゆっくりと過ごしてくださいね。
【校長ブログ】さあ、次の扉をノックしよう~がんばれ受験生~
埼玉県公立高校の出願・志願先変更が終わり、志願者数が確定しました。2月26日が学力検査です。県立川口高校は401名の出願で1.26倍となっています。
大学受験では、私立大学入試がピークを迎え、国公立大学が2月25日から第2次試験(個別試験)前期日程、3月12日から第2次試験(個別試験)後期日程です。
受験生の皆さん、入学試験は、人生において大きな試練の一つですが、最後の最後まで自分の力を信じましょう。
私は、高校時代は山岳部に所属していました。1年生の夏合宿では標高3,180mの北アルプス槍ヶ岳の山頂を目指し、30キロの荷物をザックの中に入れ、登り道を一歩一歩登っていきました。一緒に登っている先輩や仲間に迷惑をかけないように、「あと少し、あと少し」と登ったことを覚えています。背負う荷物の重みは、全て肩に食い込みます。しかし、標高が高ければ高いほど、その山頂に立った時の達成感は今でも忘れません。
私の好きな歌の一つにMr.Childrenの「終わりなき旅」(1998年リリース)があります。この曲は受験・就職の失敗など色々な挫折を経験した人が新しい一歩を踏み出すため、あるいはこれから大きなチャレンジをしようとする人が、その背中を押してもらうための定番の一曲といわれます。私の好きな部分の歌詞を紹介します
♪難しく考え出すと 結局全てが嫌になって
そっとそっと 逃げ出したくなるけど
高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいものな
まだ限界だなんて認めちゃいないさ
♪閉ざされたドアの向こうに 新しい何かが待っていて
きっときっとって 君を動かしている
いいことばかりでは無いさ でも次の扉をノックしよう
もっと素晴らしいはずの自分を探して
♪胸に抱え込んだ迷いが プラスの力に変わるように
いつも今日だって僕らは動いている
嫌な事ばかりではないさ さあ次の扉をノックしよう
もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅
これからの人生、いろいろな扉や壁に出会うと思います。これからも、もっと素晴らしい自分を探すための旅は続きます。次の扉をノックして、もっと大きなはずの自分に出会いましょう。
がんばれ川高生!がんばれ未来の川高生!
【校長ブログ】社会問題を考えてキャラクターで伝える~立体ポスター~
高校の芸術科は音楽、美術、書道、工芸の4科目から構成されています。県立川口高校では、1年次の必履修選択科目として「音楽Ⅰ」「美術Ⅰ」「書道Ⅰ」を開講しています。
高校教育の教育課程の基準である学習指導要領では、芸術科の目標は、「芸術の幅広い活動を通して、各科目における見方・考え方を働かせ、生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質能力を次のとおり育成することを目指す。①芸術に関する各科目の特質について理解するとともに意図に基づいて表現するための技能を身に付けるようにする ②創造的な表現を工夫したり,芸術の良さや美しさを深く味わったりすることができるようにする ③生涯にわたり芸術を愛好する心情を育むとともに、感性を高め、心豊かな生活や社会を創造していく態度を養い,豊かな情操を培う とあります。
県立川口高校の芸術科(美術)の 齋藤 幸栄子 教諭は、美術の授業で、「立体ポスター」と題して今日の社会問題を考察させ、キャラクターを通して立体的に表現するというユニークな取組を行っています。いわゆる闇バイト防止を訴える「学生の闇バイト 高収入バイトは犯罪!」や海洋プラスティック問題を訴える「ペットボトルの使用を減らせ!水筒を持ち歩こう」などユニークな作品が展示されています。
大切なのは社会問題を認識する力と表現力。より良い社会にしたいという若者の純粋な気持ちを大切にしたいものです。
【校長ブログ】「できる高卒」と「できる大卒」~自ら学ぶ力~
2月3日、県立川口高校では、本日から3学年が家庭研修です。大学受験をする生徒諸君の第一志望校合格を祈念しています。
今日は立春。暦のうえでは春になりましたが、寒いですね。この週末、教育社会学者である 濱中淳子 早稲田大学教授の『検証・学歴の効用』(勁草書房 2013年)を読みました。濱中淳子教授には、データ分析等でご教示をいただいたことがあります。学校教育にとても造詣の深い先生です。先生の大学入試センター研究開発部准教授時代の著作です。
「できる高卒」と「できる大卒」の分析をされています。「仕事ができる人」「仕事ができない人」を所得で表すことによって分析しています。人生において収入が全てとは思いませんが、一つの指標として興味深い分析でした。分析で吟味した要因は、①上司との対話の頻度 ②あこがれる先輩がいるかどうか ③自己学習時間 だそうです。
「できる高卒」は、①②は相関があり、③は影響があまりなかったとのこと。上司とよく対話し、先輩や同僚の中にお手本となる人を探し、そこから学んでいる傾向が強いとのこと。他者との関わりの中で成長しているようです。「できる大卒」は、①②は他者と違いが少なく、影響があるのが③の自己学習時間だったそうです。自分で何かテーマを決めて勉強するとか、新しい課題について調べたりする人が「できる大卒」になるとの指摘。国際比較調査でも、日本の社会人は学校を卒業すると自ら勉強しない傾向が強いと指摘されています。
また、社会教育学者の 広田照幸 日本大学教授も「高卒の人でも、大卒の中の『できる人』と同じように、自分で何かテーマを決めて、コツコツ勉強してほしい。気づくと、あまり努力もしていない大卒の『できない人』を尻目に、会社の中の出世頭になったりするかもしれませんよ」と指摘しています。
いつの時代でも自ら学ぶ力は大切だと思います。
【校長ブログ】先生方も学んでいます~高校生のこころの健康のために~
1月23日、県立川口高校では、「高校生のこころの健康のために周囲の大人ができること」を演題に東邦大学医学部助教の内野 敬先生にご来校いただき、教職員研修を行いました。
内野先生は、東邦大学医学部社会実装精神医学講座助教の他、一般社団法人SODA理事 を兼務されています。2022年に開設された「こころサポートステーションSODAかわぐち」(イオンモール川口前川)の運営にも携わっており、メンタルヘルスの不調や様々な心理社会的困難を抱えた思春期・青年期の若年者に対して、精神・心理面のサポートを行うとともに、地域における多領域の関係機関による連携支援体制づくりにご尽力されています。
県立川口高校の先生方は、内野先生がご教示された事例やデータに、とても共感されていました。私は、コロナ禍以降、生徒や保護者の皆さんのお悩みが一層多様化していると思っています。県立川口高校では、メンタルヘルスの悩みを抱えた生徒や保護者が、悩みや困りごとが深刻になる前に、気軽に相談やサポートが受けられる体制づくりを目指しています。ご講演いただいた内野 敬先生に感謝申し上げます。
【校長ブログ】命の大切さを実感~生物解剖観察~
1月22日放課後、県立川口高校では、生物実験室において3学年生物選択者の希望者を対象とした「豚の解剖観察」を行いました。通常の授業ではできない特別講座です。薬学や医療系への進学予定者などが集まりました。生徒も最初はビックリしていましたが、豚の頭部の構造に興味津々。私も、豚の頭部全体を初めてみました。刺激強めなので、写真は画像処理をしてあります。
高校生物の「関心・意欲・態度」の観点は、「日常生活や社会との関連を図りながら生物や生物現象への関心を高め、目的意識を持って観察、実験などを行い、生物学的に探究する能力と態度を身に付けていること」を趣旨としています。身近な生命体としての豚を対象とした解剖実習は、知識の理解を深めつつ、生命尊重の態度を育成する取り組みとして有効です。食への無関心さや生命のリアリティの欠如など、現代社会のもつ課題からも生命への関心を高める必要性があります。
今回の解剖観察を見学して、解剖実習は生徒に生物体の構造と機能に関する実感を伴った理解をさせることができるとともに、生命の素晴らしさを実感させることができると思いました。
【校長ブログ】経験・気合・勘の3Kで共通テスト「歴史総合・日本史探究」を解いてみた?!
大学入学共通テストが終わりました。受験生の皆さん、お疲れさまでした。受験に立ち向かった力は、人生で君を励まし支える力になります。気持ちを切り替えて、最後は自分を信じて、さあ、個別入試、2次試験に向けてラストスパートです。
私は、大学で日本史を専攻していたので、毎年、大学入学共通テストの日本史を解いています。今回から新学習指導要領に基づく出題になっており、「歴史総合・日本史探究」となり、出題内容も変わっています。今回は大学入学共通テスト「歴史総合・日本史探究」を解いてみました。県立川口高校の教科書選定のために昨年6月に日本史教科書に触れて以来、1ページも開いたことのない者が、昨年に引き続き経験・気合・勘の3Kで立ち向かってみました。私の結果は、33問中3問誤答の91点でした(涙)。昨年度と同じ誤答数、同じ得点でした。ご笑覧ください。
今回から、新科目の「歴史総合」と新科目「日本史探究」の試験です。「歴史総合」は、多くの高校では1学年で必履修となり、主に近現代の日本史及び世界史の両方を取り扱い、2022年の学習指導要領施行により新たに設置されました。また、かつての大学入試センター試験では、大問のリード文を読まなくても、各設問ごとの解答ができる問題が多かったのですが、大学入学共通テストでは、リード文と設問の関連性が強くなりました。
私の印象としては、従来になく日本史の知識だけでは対応できない問題があり、受験生はだいぶ戸惑ったと思います。大問1は「歴史上における境界」を主題として、18世紀末~20世紀の東アジアやヨーロッパを中心とした歴史総合範囲の出題。問1のa・bは、時期に注意した上で地図における場所の判断が必要になる。bの上海が開港されたのはアヘン戦争後の南京条約による。「18世紀末」の時点で利用されていた港は、aの広州。従来の「日本史B」では把握しきれない問題。私も第1問でつまずきました。私の誤解答は第1問、第22問、第28問。反省しきりです。
ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催の分析では、「大問数は6で昨年の日本史Bから変更はなく、解答数は32から33に増加した。蒙古襲来絵詞などの馴染み深いものから、ミルクキャラメルの広告まで多彩な資料が扱われ、受験生に身近な視点から出題された。資料読解を通じ歴史事象のつながりを考えるものが散見されるなか、踏み込んだ知識や時期判断を要するものも一定量みられ、難易は昨年の日本史Bよりやや難化」と分析。
大手予備校の河合塾によると、「試作問題の歴史総合は、ほぼ日本史の知識のみで対応できたが、本試験の歴史総合では日本史の知識だけでは対応できない問題が複数出題されており、試作問題に比べて難易度が高かった」と分析。
代々木ゼミナールでは、「昨年の「日本史B」に比べてやや難化した。新科目である歴史総合では日本史探究で学習しない世界史的な知識を問う問題の出題が多く、日本史探究でも判断に迷う問題が散見された。それに加えて、思考力・判断力を測る出題傾向は続いており、時間配分には苦労しただろう」と分析。